弥生

クラウド会計の導入・運用は、最初の数か月が肝心

クラウド会計の機能の大きな特徴として、「勘定科目の提案」と「自動登録ルールの記憶」があります。

これらの機能は、入力業務の手間を減らす便利な機能ではありますが、少し捉え方を間違えると大きなリスクになり得ます。

そのリスクとはどのようなものかというと。。。

1.クラウド会計の「勘定科目の提案」とは

まず、「勘定科目の提案」とはどのようなものでしょうか。

会計の入力作業をする上で必須なのが、収入や支出に対して、勘定科目、金額、摘要と呼ばれるコメントを入力していくことですが、勘定科目は入力時にどうしても判断に迷いがちな項目です。

その際に、振込先の会社名などから推測して、科目をあらかじめセットしてくれるのが、提案機能と呼ばれるものです。

AI技術を使って経理を効率化ということが最近よく言われていますが、提案機能もその一つです。

但し、提案してくれる科目が適切かどうかというと、必ずしも適切であるとは限りません。

IT技術の発達により機能の精度も初期に比べ向上しましたが、精度が100%になることは実質的に不可能であって、科目が適切か否かを判断するには、最低限の会計知識はどうしても必要になってしまう、というのが現状です。

2.クラウド会計の「自動登録ルールの記憶」とは

「自動登録ルールの記憶」とは、一度登録した「勘定科目」、「振込先」、「摘要」といった情報の組合せをシステムに記憶させ、次回以降、同一の振込先へ振り込んだ場合、同一の得意先から振込入金があった場合などに、記憶された情報を呼び出してくれるものです。

提案機能と同様、一から入力をする必要がなく、入力の手間が省けるため、入力業務の効率化につながります。

但し、初回に誤った情報で登録してしまうと、その誤った情報がシステムに記憶されてしまいます。

記憶された情報を修正することはもちろん可能なのですが、誤りであることに気づかないまま放っておくと、誤った情報のまま2回目以降も登録されていってしまうことになり、非常に危険です。

3.リスクを最小限にして、メリットを最大限享受するには

上記の通り、二つの機能は、クラウド会計のメリットであるのと同時に、適切に運用しないとリスクになり得るものです。

それでは、リスクを最小限にして、メリットを最大限享受するには、どのようにするべきでしょうか。

私の考える方法は下記です。

・導入当初こそ、専門家に任せること、もしくはアドバイスを求めること
・必要最低限の会計知識を習得すること
・システムは必ずしも万能ではないと認識すること

導入した最初のひと月、ふた月に適切に入力しておくことで、精度の高い情報がシステムに記憶されていきますので、その後入力していく際も精度の高い帳簿を作ることができます。(最初のひと月、ふた月と書いたのは、継続して同じような会社との入出金があれば、概ね2ヵ月ほどで大抵の取引は網羅できるためです。)

もちろん、それをするにあたって、会計、経理に明るい方であれば特段問題ありませんが、そうでない場合は、スタートの時こそ専門家に頼るべきだと思います。

メリットばかりが強調されがちなクラウド会計ですが、メリットを最大限活かすには、専門家のアドバイス、そして、最低限の会計知識はどうしても必要です。

会計知識といっても、簿記の資格を取得といった方向ではなく、多少でも会計、経理に興味を持って頂くだけで十分だと思っています。

精度の高い経理を実現するというだけでなく、「数字に強い」経営者になって頂くことが事業の成功にもつながっていきます。

 


 

「クラウド会計に強い」池袋の税理士事務所 会計事務所タクシス

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